貯蓄保険の販売停止・保険料値上げによる相続対策への影響は?
先般の新聞に貯蓄型の生命保険の販売を止めたり、保険料の値上がりする動きが広がってきた。との記事が載っていました。
住宅ローンの金利が史上最低になっています。金利が低いということは、お金を借りる人にとっては助かるのですが、お金を預ける人にとっては、なかなかお金が増えないということです。長期金利が低下している経済情勢においては、将来保険金を受け取る時の計算の基になる標準利率が下がります。保険会社が約束する運用利回りを得にくくなったため、契約者から受け取る保険料を値上げしたり、販売を止めたりする事につながります。
新聞記事の中では、銀行預金に代わる個人マネーの受け皿となっていた保険商品に対しても、金利低下の影響が及んできていると書かれています。
4月から算定方法が変更になり、保険料をまとめて一時払いする商品で、一定期間運用する個人年金保険や養老保険について、いくつかの保険会社では販売が停止されます。また、一時払終身保険の保険料が値上がりする会社も出てきました。
生命保険会社が運用の利回りを約束する商品で、日銀の追加緩和で生命保険会社が主な運用先としてきた超長期国債の利回り低下が加速したため、運用利回りが契約者に約束した利回り(予定利率)を下回ったり、逆ザヤに陥る懸念があるため、商品の販売停止につながっています。
退職金の運用などで人気がある一時払いの終身保険については、販売中止にはいたっていませんが、保険料の引き上げを行う会社が出てきています。
この影響は一部の会社においては、学資保険の販売を停止するなどにもつながっています。
生命保険活用のポイントは?
もう一度、生命保険の特徴を整理した上で、今回の販売停止・保険料値上げの相続対策に対しての影響について考えてみましょう。
相続対策として生命保険を活用する場合には、大きく分けて4つのポイントがあります。
1. 死亡保険金の「500万円×法定相続人の非課税限度額」を活用する事ができる。
2. 死亡保険金は受取人の捺印だけですぐに現金化できる。
3. 死亡保険金は、生命保険会社の受取人の範囲内で、指定する事ができる。
4. 死亡保険金は「受取人固有の財産」として、遺産分割の対象外の財産とすることができる。
それぞれのポイントについては、また別の機会に整理を行いますが、この4つのポイントを理解したうえで、今回の貯蓄保険の販売停止の影響について考えてみましょう。
生命保険に加入する事によって、法定相続人の非課税限度額を活用する事は、相続対策の基本と言えます。
例えば被相続人が4人の場合、500万円×4人、2000万円の非課税限度額になります。
銀行にお金を預けていた時と、生命保険に加入して亡くなった時に死亡保険金を受け取った時とでは、財産の評価額が2000万円異なるということです。単純に計算すると相続税の税率が30%の場合、600万円の効果、相続税の税率が40%の場合、800万円の効果がある事になります。(配偶者の有無、遺産分割の割合等によって効果は異なります)
相続対策として非課税限度額を確保するための保険は、基本は終身保険です。今回の改正で一時払いの終身保険の保険料が値上がりになった会社もありますが、相続する財産が多い方にとっては、保険料値上げの影響よりも、非課税限度額を活用する事による節税効果が多い場合も考えられますので、具体的に検討してみてください。(亡くなった時に残された財産の金額、被相続人の数、受け取る生命保険の額等によって、税額、税率が異なります。必ず事前に税理士の先生等に相続税のシュミレーション等を相談した上で検討して下さい)
死亡保険金が、すぐに現金化できるという事は、相続対策として非常に重要です。不動産のように、売却までに時間がかかる財産と現金とでは、遺産分割においては大きな違いがあります。アパートやマンション等を経営されているオーナーさんの場合、不動産は多いが、現預金は少ない方が多いですので、生命保険で納税資金を準備する事を検討してみてください。今回の販売停止の商品は、基本的には一時払年金保険や養老保険で、一時払終身保険については、一部の会社で保険料が値上がりになりましたが、加入する事は可能ですので、今後保険商品が値上がりしたり、販売停止になる事も踏まえて、保険に加入しておくことも検討下さい。
生命保険の受取人を検討することで、遺言書の代わりに特定の人にお金を残すことが出来る特徴、生命保険は受取人固有の権利については、これまでと変わりません。生命保険を活用して、家族の想いをつなぐ“円満な相続“を実現しましょう。
相続対策への影響は?
今回の改正で取り扱い中止や販売停止になった商品は、一時払個人年金や養老保険が中心です。一時払終身保険については、保険料が引き上げられた会社もありますが、現時点では販売されています。
一時払年金保険や養老保険は、金融商品として考えると魅力がある商品化も知れませんが、相続対策として生命保険を考えた場合、亡くなった時に生命保険の死亡給付金として受け取ることが出来る終身保険になります。
何度も書きますが、相続対策としての基本は亡くなった時に相続人が死亡保険金を受け取る終身保険が基本になります。今回の改正は、保険料が引上げになり運用という意味での効果は小さくなりますが、非課税限度額を活用する事、相続においてすぐに受取人だけで現金化できる事、残したい方に財産を残すことが出来る事については、変わりがありません。貯蓄保険の販売停止の影響は、今回の流れを理解した上で、生命保険の活用についてもう一度整理するきっかけだと考えてみて下さい。
各生命保険会社が同じ時期に一斉に販売を止めるのではありません。各社によって対応が異なります。生命保険の活用については、各社の状況を見ながら検討してください。
生命保険は、一般的な金融商品と異なり、誰でもお金を出せば購入できる商品ではありません。加入者の年齢や、健康状況により、保険料が大きく変わりますし、健康状況によっては参加できない事もあります。あの時に加入しておけばよかったとあとから後悔しない為にも、生命保険の活用について検討して、今後の経済情勢も含めて判断する事が大切です。
相続対策として生命保険を活用する場合には、相続税のシュミレーションを行って、生命保険に加入することで、いくらの節税効果があるのかを計算する事が基本です。
その他に、相続における家族間の問題、悩みの整理を行い、生命保険を活用する事によって、どの問題の解決につなげる事が出来るのかを理解して加入する事が大切です。
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