相続対策として養子縁組が有効だと聞いたが?
相続税が2015年より改正になります。基礎控除の引下げ、税率構造の改正など、相続についての記事を新聞や雑誌などで眼にする機会が増えています。
相続対策として、養子縁組を活用しましょうという話を聞いた事があるのではないでしょうか。「養子縁組届」を提出することで、法律上は、本当の親子と同じ関係となり、養親との間に相続の権利や、扶養の義務が発生します。子供が増えるという事は、相続人が増えますので、基礎控除が増え、1人当たりの法定相続分が少なくなりますので、納める税額も少なくなります。
ただし、養子縁組を行う事で相続人が増え、遺産分割協議がまとまりにくくなる場合もありますので、養子縁組が本当に好ましいのか、場合によっては、養子縁組と併せて遺言書を作成する等の相続対策を考える事が必要です。
成年に達していれば結婚していなくて独身であっても養子縁組を行う事が出来ます。
どんな時に養子縁組をするのでしょうか。
夫婦で子供がいないので、養子縁組をして、養子を育てたい
結婚しておらず、相続人がいないので、甥や姪を養子にする
長男の嫁を養子にする
相続対策を考えて、孫を養子にする
養子縁組を行う事による、相続上のメリット
相続税の基礎控除(非課税額)が増える
生命保険金の非課税枠が増える(500万円×法定相続人の数)
死亡退職金の非課税枠が増える(500万円×法定相続人の数)
相続税の総額の計算(法定相続分に応じる取得金額が少なくなり、税率が下がる)
遺贈よりも養子縁組の方が、登録免許税が安い、不動産取得税が不要
これらの計算を行う時に法定相続人の数に含める養子の数は一定に制限されています。
被相続人に実の子供がいる場合、一人までです。
被相続人に実の子供がいない場合、二人までです。
実の子供として取り扱われ、法定相続人の数に含まれるのは、
被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっているもの
被相続人の配偶者の実の子で被相続人の養子となっているもの
被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組により配偶者の養子となっていた人です。
ただし、民法上は養子縁組については、制限がありませんので、何人とでも養子縁組を行う事は出来ますが、法定相続人の数に数える事が出きる養子の数には、上記の制限がある事になります。
実際に養子縁組が成立するためには
養親は成人に達していること
養親は養子よりも年上であること
養親と血のつながりのある、祖父母やおじさん、おばさんを養子には出来ない
未成年者を養子にする場合は、夫婦2人とも養親になる
既婚者が養子になったり、養子をとったりする場合は、配偶者の同意が必要
どれくらい効果があるのか資産してみましょう。
例えば、相続財産をご主人が3億円、奥様が1億円の財産をもって、子供が二人の相続の場合と、養子縁組を行って子供が三人の場合の違いを計算してみましょう。
ご主人の相続
3億円-4800万円=2億5200万円
奥さまの法定相続分2分の1 1億2600万円(税率40%)
子ども一人の法定相続分4分の1 6300万円(税率30%)
相続税の合計 2860万円
奥さまの相続
1.5憶円+1億円=2.5億円
2.5億円-4200万円=2億800万円
子ども一人の法定相続分2分の1 1億800万円(税率40%)
相続税の合計 4920万円
一次相続、二次相続の合計 7780万円
養子縁組を行って子供が3名の場合
3億円-5400万円=2億4600万円
奥さまの法定相続分2分の1 1億2300万円(税率40%)
子ども一人の法定相続分6分の1 4100万円(税率20%)
相続税の合計 2490万円
奥さまの相続
1.5憶円+1億円=2.5億円
2.5億円-4800万円=2億200万円
子ども一人の法定相続分3分の1 6733万円(税率30%)
相続税の合計 3960万円
一次相続、二次相続の合計 6450万円
養子縁組を行う事で、相続税が合計1330万円下がります。
(実際には、生命保険の非課税枠を更に活用出来たり、贈与を活用することで、節税効果をもっと上げる事が出来ます)
孫を養子にすると相続税が2割増しになる
孫を養子縁組する事は、相続を一世代飛ばして相続させることができますので、相続対策として非常に有効です。
ただし、相続または遺贈により財産を取得した者が一親等の血族及び配偶者以外の者であるときは、その者に係る相続税額は、その者の相続税額に100分の20に相当する金額を加算します。(相続税の計算をした結果、1000万円の相続税となった時には、2割増しの1200万円を支払うことになります)
養子縁組を行うと、民法上一親等の血族にあたるのですが、孫の養子縁組については、平成15年の税制改正において、「孫の養子縁組の際の相続税は、20%割増される」事になりました。実際に孫の養子縁組を考える時には、家族構成、どのような財産を孫に残すのか等、多角度から検討することが必要です。
亡くなった時に初めて養子縁組をした孫がいる事を知ったきょうだいから意見が出て、遺産分割協議がまとまらないケースもあります。遺産分割協議がまとまらないということは、特例を活用する事も出来ませんので、養子縁組で節税を考えていたのに、養子縁組を行ったことによって、話し合いがまとまらず「争族」になることもあります。
養子縁組を行う事で、円満な相続でなくなってしまうのであれば、対策の意味がありません。節税の観点だけから養子縁組を考えるのではなく、養子縁組の制度について、よく理解をして、上手く活用するようにしてください。養子縁組について、解らないことがあれば、いつでもご相談ください。
→養子縁組について詳しく知りたい方は個別相談をご利用ください
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